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こころの誕生
3月に入ると季節は春めいてきます。通常、意識することは少ないですが、からだが微妙に変化します。それは「からだが開く」という表現を私たちは使います。
実際に温度が上がり、2月の空気が引き締まったような「気」の感じが和らぎ、皮膚や筋肉がゆるんできます。
もちろん春入りは身体の変化だけではありません。梅の花がいっせに開花していくものそうですし、最近でははるか彼方のゴビ砂漠から「黄砂」が飛んできました。
これも多分風向きの関係でしょうが、こういった現象が、ほぼ同時期に起こっているのです。そしてその自然の変化は私たちに大きな影響(身近な病気としては花粉症)を及ぼします。
人間は他の動物と違って前頭葉が発達しています。そして普段、自分で感じていること、考えていることが「自分のすべてだと」錯覚しています。
人間は進化の過程で直立しました。そのおかげで手、指先が自由に使えるようになり脳が発達しました。この流れは子供の成長過程を観察しているとわかります。
人の成長過程は進化のプロセスをそのまま歩んでいるのです。立ち上がり、手が自由に使えるようになると「言葉」が出てきます。それまで顔の表情や泣くことでしか、表現できなかった要求が「言葉」を通してできるようになるのです。
言葉というのは「命名」することから始まっています。例えば赤ちゃんにお乳を与えようとすると、飲みたくないときには口をつぐんで、乳首を避けようと首をふります。拒否のゼスチャーは万国共通なのです。
お乳を飲みたいときは、上を向くようにして、口をあけます。この動作に伴って発声するとMaという音になります。授乳に起源をもつMaという音が食べ物を指すように発達した国語と、母親を指すように発達した国語とがあるのが「命名」された言葉の起源といわれています。
さてこうして言葉を覚えていき、さらに文字が書けるようになると、脳は大きく発達します。
人類の歴史の中でも文字の誕生は大きな出来事であったと言われています。文字言語を使うとき、人間は「いま・ここ」という時間・空間の束縛から解き放たれ自由になるのです。
例えば過去の誰かが言った言葉、お釈迦さんでもキリストでも、文字として残されています。それは時間・空間を越えて影響を与えています。文字があったからこそ記録として残され、今の人はそれに触れることができます。それがなければマザー・テレサのような人は出てこなかったでしょう。
私たちも何かを考えているとき、それは頭の中で言葉を使っています。そしてより生産的に考えるには紙に書くことが有効です。
つまり文字の誕生とそれを操ることによって人間の意識・心は、はっきりと身体の感覚から離れて独立したのです。明確な意識世界の誕生です。
人間の文化も人間の心・イメージの具現化したものです。心の誕生は人間のいのちの自由を求める力の結果とも言えるでしょう。
しかし、今は地球の主となった人間ではありますが、そのこころはうつろう影のようなものです。バーチャル(仮想)なのです。その仮想が肥大化し暴走しているのが今の有り様です。
人類の進歩に寄与すべきはずの科学も、人間の心が生み出したものですが、それは自然界を改変し、この世界を支配しようとして働きました。
それは自然の側から見れば「攻撃」されているとも言えます。
また仮想の心を拡大するあまり、それは心を生み出すもとである、脳を含めた身体にも大きな負担をかけています。
人間が進化して獲得した自由なこころですが、それは制御が効かず、放っておけば暴走し、破滅に向かう危険性を含んでいるのです。
それを何とか道徳や法律や宗教で抑え込んでいるのが現状です。
暴走するこころを制御する鍵は肥大化した頭ではなく、元々自然と一体である身体に目を向けることです。主役を頭ではなく、からだに一時的にでもなってもらい、その声を聞くのです。

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